誰目線でビジネスをするか

 昨日は、録画しておいた『ガイアの夜明け』を2本立て続けに見ました。昨日見たのはこちらの2本。

『01月17日放送 第500回 本格決戦!軽自動車ウォーズ〜なぜホンダは"軽"に賭けたのか?〜』

『01月24日放送 第501回 買う気にさせる極意〜客の「情報」を制する者が勝つ〜』


 1本目の1/17放送分の方は、軽自動車がよく売れる時代になり、自動車メーカー各社も軽自動車に力を入れるようになった。そして、その軽自動車のターゲットは、主に女性である。それなら、女性目線の店づくりをしなければならないよね。というような話でした。


 その中でびっくりしたのが、車屋なのに店内に車を置かないというお店。これは、千葉県印西市にあるダイハツ千葉ニュータウン店なんですが、ここは軽自動車専門をうたって、正に女性目線の店づくりをしているお店なんだそうです。そして、そこに来店する女性から、「店内に車を置かないでほしい」という要望が寄せられ、店内に一切車がない店づくりにしたんだとか。


 もちろん、そちらのお店では、店内に車が無いばかりか、商談スペースには荷物を置くカゴを用意したり、提供されるドリンクやスイーツもこだわりがあったり、また、キッズスペースも広くとってあるなど、完全に女性を意識したお店になっています。ネッツトヨタ南国などもそうですが、お客様が気軽に来店してゆっくりしていけるような、そんなお店づくりでした。


 その一方で、対極的に取り上げられていたのがホンダでした。ホンダは長年、新しい軽自動車を発売せず、会社としても、店舗の営業員たちもどこか軽自動車を軽視していたそうです。しかし、この軽自動車ブームにより、その流れを無視していることはできず、つい先日『N BOX(エヌ ボックス)』という新しい軽自動車を発売したわけです。ところが、先のダイハツのように女性が来てしやすい店づくりにはなっていないんですよね。


 先日、僕も車検があって、近くのホンダに行きました。すると、店内には展示車があって、その中にこのN BOXもありました。でも、店内にキッズスペースはありましたが、女性を意識したようなものはほとんどなかったと思います。車の雑誌に、車の模型。いかにも、車屋なのです。


 車屋なんだから、いかにも車屋で当たり前なんですが、でも、番組である女性のお客様は言っていましたよ。「あんまり車くるましているお店には行きたくない」と。当たり前が当たり前ではないことが証明された瞬間でした。いかにも車屋ですというお店は、女性や車に詳しくない人には圧迫感を感じさせるわけです。


 一方、1/24放送分の方は、どのようにして消費者によりモノを買ってもらいやすくするかという話でした。その中で、僕が注目したのはJR東日本ウォータービジネスのお話です。JR東日本ウォータービジネスといえば、そうです、あの駅構内にある『客の好みが分かる自販機』です。


 で、この客の好みが分かる自販機も設置からだいぶ月日が立ち、約3億件もの購買データが溜まったそうです。それを分析したところ、女性の利用が男性に比べてかなり少ないことが分かったんだとか。そこで、女性に目を向けて、女性が最も買う傾向にあるミネラルウォーターに力を入れるということになりました。


 そして、JR東日本ウォータービジネスでは、もともとこの自販機に置いてあった、JR駅構内でしか売っていないミネラルウォーターの蓋を改良して、女性に買っていただきやすくするという戦略を練っていたのですが、この新型の蓋の使い方が分かりづらいのです。そこで、キャップに説明書きを付けるわけですが、モニターの女性からはそれでも分かりづらいとの声。さらに社長には、「その説明書きの紙がなぜオレンジなんだ?」との指摘。そして、担当者が予めボツにしたビンク色の説明書きと見比べて女性に選ばせたところ、ほとんどの女性がピンクの方が良いと答えるわけです。まあ、そのミネラルウォーターはまだ発売はされていませんが・・・。


 さて、今回この2本の番組を見て感じたことは、『お客様は誰か』ということです。軽自動車の話では、ダイハツとホンダの差は歴然です。誰の目線で店を作り、誰のためのサービスを提供するのか。そこに明確な差があるわけです。


 そして、JR東日本ウォータービジネスもそうです。女性をターゲットにしたミネラルウォーターを発売すると言いながら、プロジェクトメンバーは全員男性。しかも、おじさんです。別におじさんが悪いわけではありませんが、あれでは良いものも生み出せないだろうなと思ったのも事実です。なぜなら、目線が完全に男性だからです。


 もし、女性目線なのだとしたら、蓋の形状を変えるだけでなく、ペットボトルの形、蓋の色だって変えた方が良いかもしれませんし、ミネラルウォーターだからといって、外装フィルムが水色である必要はないわけです。それなのに、そういうところには着目せずに、新しい蓋という“機能”にばかり注力する。これぞ正に男性目線ではないでしょうか。


 メーカーは良い商品を作りたいと思い一生懸命ですが、なかなかお客様が求めるものを作れないでいます。メーカー発想ではいけない、プロダクトアウトではいけないと分かっていながら、未だにそうなのです。今回、2本の番組を見ながら、改めてそのことを強く感じました。


 お客様が求めるものを情報として持っているのであれば、あとは自分の目線をどう変えられるかです。僕はこれは訓練でどうにでもなると思っています。いろんな人に触れ合い、いろんな価値観の違いを知り、相手の立場で物事を見る。また、業界を問わずに、上手くいっている企業の戦略をよく観察する。そういうことで、自分の脳を鍛えていくしか無いと思いますし、一定の訓練をすれば、なぜその企業、その商品が売れているのかが、瞬間的に分かるようになると思います。


 女性が消費の主役であるということは、これから先もしばらく変わらないでしょうから、特に男性の皆さんは、目線を変えるということを意識しておいた方が良いと思いますよ(笑)