まい泉のパン耳ラスクに見る、商品と処分品の違い

 いよいよ秋ですね。食欲の秋ですね。皆さん、美味しいもの食べてますか?さて、今日はそんな食欲の秋の最中、あの『かつサンド』で有名なまい泉の話題を取り上げてみたいと思います。


 まい泉のかつサンド、皆さんは食べたことがありますか?まい泉は、とんかつはもちろん、ソースにもこだわりがあって、まあ美味しいですよね。普通に美味いです。そして、そんな美味しさを支えているもう一つのメインの食材が、あのパンなわけですが、今日はそのパンにまつわるお話です。


 まい泉のパンは、やわらかくてキメが細かい生地でありながらも、時間が経っても味や食感が変わらなく、また切り口が美しく見えるなど、あのかつサンドにはとにかくぴったりのパンですよね。この食材にはこの付け合せ、というのは料理の世界では何にでもあるでしょうけど、あのかつサンドには、あのパンという、なかなかのマッチ具合です。


 で、あのかつサンドを頭の中にイメージしていただきたいのですが、皆さんイメージできましたか?美味しそうですね〜。お腹が空いてるそこのあなた、よだれが出てますよ(笑)まあ、そんな妄想はさておき、こちらの写真を見てください。



 こちらのかつサンド、何かが無くなってますよね。何だと思います?パンをよく見てください。そう、パンの耳がありませんよね。そんなんサンドイッチなんだから当たり前だろという話ですが、このパンの耳をまい泉ではどうしてると思いますでしょうか?


 そりゃ、いらないんだから捨ててるんじゃないの?いやいや、さすがにそれはもったいないから、バイト君が食べてるんじゃない?


 まあ、現実はそうではなくて、これまではこのパンの耳、パン粉やさんに卸したり、飼料に使ってもらっていたりしていたそうです。捨てたり、バイト君が食べてたりはしてません。さすが、無駄がありませんねまい泉さん。しかし、このまい泉、このパンの耳のさらなる活用を最近思い立ったというんですね〜。


 その活用法というのが、パンの耳を使った『パン耳ラスク』。皆さんも、子供の頃ご家庭でお母さんにパンの耳を揚げてもらいませんでしたか?私はあのパンの耳を揚げて砂糖をかけたやつが大好きでしたが、まい泉では余ったパンの耳でラスクを作ろうと考えたわけです。


 とはいえ、全てにこだわるまい泉ですから、パン耳ラスクを作るにも一切妥協はしません。何度も何度も試作を重ねた上で、同社のオリジナルブレンド塩を使用した「スパイスソルト味」と、口に入れた瞬間にゴマの香ばしい風味が広がる「黒胡麻砂糖味」の2つの味を作り上げたのです。


 そして、最初は店舗での食事利用客をターゲットにして、おみやげ品としてレジ横の小さなスペースで売りだしたらしいのですが、売ってみたらこれが何とバカ売れ。今年6月の発売初日には300袋を売り上げ、その後も口コミなどでその噂は広がって、今では毎日約500袋も売れているんだそうです。


 まあ“まい泉のあの美味いパンの耳がラスクになった”というのは、なかなかのインパクトがありますし、価格も294円と安いですから、そりゃ人気もでますよね。社内での「パンの耳には他にも新たな用途があるのでは?」というひらめきが、今では全国の直営店や同社のサイトでも販売される人気商品になったわけです。


 でも、こういうことって、皆さんの会社でも可能性はあるのではないでしょうか?同じ食品で考えても、お煎餅のかけらやカステラの切れ端、規格に合わない農産物なども、正規な商品とは別に、ちゃんと商品として売られていて、しかもしっかり売れてますよね。たぶんこれらの商品は、これまではゴミとは言わないまでも、処分の対象だったわけですが、でも、このご時世捨てるにはもったいないし、売ってみたら案外売れるんじゃない?ということで、商品化されていったんだと思います。きっと、そんな事例はたくさんありますよね。


 それが、このまい泉のように、もともとブランド力や商品力のあるものの付属品ともなれば、それは価値ある商品として、きちんと支持されるわけです。ここで大事なことは、あくまで“価値は顧客が決める”ということですね。だって、もともとこのパンの耳もパン粉やさんへの卸しや飼料だったわけですけど、そうしようと決めていたのは、顧客ではなくまい泉自身ですよね。


 ところが、それをちょっと加工して(ちょっとじゃない手の込みようですが)、商品化したら、顧客から大きな支持を得た。これが、顧客が価値を見出した瞬間なわけです。これっておもしろい現象ですよね。


 皆さんの会社でも、現在作っているもの、売っているもの、それはもちろんすばらしい商品でしょう。でも、いま処分しているもの、商品としては売っていないものに、何か隠れた魅力はありませんでしょうか?あるいは、一工夫加えたら、化けそうなものはありませんでしょうか?


 もう一度言いますが、価値は顧客が決めるのです。皆さんの会社の処分品も、どこの誰が評価してくれるか分からない。そんな可能性を見出し、手を差し伸べるのも、僕ら企業の仕事なのかもしれませんね。