『スキンケア大学』に学ぶ、顧客政策の中心となるWebサイトのあり方

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女性の美への欲求はいつの時代も変わることなく、お化粧やスキンケアへの関心は、どの世代でも総じて高いものになっています。


巷には、こうした美容系の雑誌やネットでの情報が溢れていますし、友人、家族などとも情報交換をしながら、女性たちは、化粧品を選んだり、日々のスキンケアをしていることと思います。

しかし、こうして情報はたくさん溢れているものの、女性の中で案外多いのは、本当に正しい方法が何なのかが分からなかったり、自分自身の肌の特性や肌に必要なことが分からないという人たち。

情報はたくさんあり、@cosmeのような口コミランキングをまとめてくれるサービスも有りますが、それらは所詮人気のランキングであって、自分自身の肌に適切なのかどうかは全くの別問題ですよね。

それなのに、世間で人気だから、あのモデルさんも使ってるからと、自分の肌に合わない化粧品を使ってしまって、肌にトラブルを起こしてしまったなんていうことは、多くの女性が1度は経験があるのではないでしょうか。

女性全般に関心があるが故に、その関心に応えようと情報を出すメディアも多いわけですが、こうして情報が溢れていることは、女性たちにとって自分自身のことを却って分かりづらくしているのかもしれませんね。

そんなところに目をつけたのが、decenciaという企業。

このdecenciaは、ポーラ・オルビスホールディングスのグループ会社なのですが、同社社長の鈴木将史氏は長年化粧品業界で過ごし、たくさんの女性たちとお話する中で、女性たちが「正しくスキンケアを学べる場」があまりにも少ないことを強く感じてきたんだそうです。

そこで、decenciaでは今夏、『スキンケア大学』というWebサイトを作り、女性たちが正しいスキンケアを学べる場を自ら作り出しました。

マーケティングの品格-スキンケア大学

decenciaはもともと化粧品の販売会社ですが、このスキンケア大学では売りの姿勢を一切無くして、一問一答で正しいスキンケアの方法を提示したり、女性たちの意識調査をもとに女性たちの誤った認識を正してくれたり、美容のプロフェッショナルが様々な美容の知識を教えてくれたり、さらには、このサイトを通じてリアルの場で公開授業を行ったりと、女性たちに正しいスキンケアを学んでもらうことに特化したサイト構成になっています。

もうこれは、完全なる顧客学習ですよね。

一方、このスキンケア大学は、この顧客学習をさせながら、また別な目的も達成する場にもなっています。

その1つが、Webを通じた、お客さんとの関係構築です。

このスキンケア大学は、“大学”という名の付く通り、お客さんはこのWebサイトを通じて学習をしていくわけですが、学習をするということは、このWebサイトを訪れたお客さんが、それなりの時間をサイト内で過ごすということですよね。

しかも、それが女性の一番の関心事であるスキンケアに関するものですから、女性としては時間も忘れてどんどんのめり込むかもしれません。

そうしてこのWebサイトに時間を費やしていくとどうなるかというと、このサイトを訪れた人たちは、次第にそこに愛着が湧いていくんですね。

これは、以前このブログでも紹介した『飼う飼うゲーム牧場』の事例と同じことで、やはり、人間、時間を使ったモノには次第に愛着が湧いてくるものなのです。

そうすると、一切売りの姿勢を出していないサイトの中から、お客さんがその運営会社を調べて、今度は実際に店頭に足を運んでみるなんていうことにもつながっていきますし、こうして時間を使ってくれたお客さんたちは、それを家族・友人・知人にも広めてくれる可能性が高まりますよね。

このように、このスキンケア大学は、顧客学習をさせながらも、お客さんとの関係構築をする場にもなっているわけです。

そして、このスキンケア大学のもう1つの狙いは、顧客を知る場にするということです。

現在もサイト内で意識調査のコーナーを設けたり、公開授業を行ったりしていますが、こうしたところを、お客さんの情報を集めたり、好みを知ったり、その人ぞれぞれの肌の特性を知ったりする場へと応用していくことも考えられますよね。

例えば、今後、サイト内に会員制のページを設けて、そこで企業とお客さんとがOne to Oneで関わることができる仕組みを作ったりすれば、お客さんからすると、家にいながらにして百貨店の店頭でカウセリングを受けるのと同じぐらいのことはできますし、企業としては、そのお客さんの様々な情報から肌の特性、好みまで把握できるようになるわけですね。

そうなれば、その後も最適な提案ができますし、そこから店頭に来ていただいたり、ネット上で商品を買っていただいたり、さらには、ここで知り得たお客さんのニーズや価値を製品づくりに活かしたりと、様々なところに広がっていく可能性がありますよね。

私の友人にも、ある大手化粧品メーカーでビューティーコンサルタントをしている人がいますが、彼女も、「このスキンケア大学は、お客さんが私達に聞きたがるような美容の知識や情報が分かりやすく掲載されていて、このサイトで知識を得れば、カウンターに行かなくても、自分に必要な化粧品が大方判断できる」とまで言っていましたし、あとは、こうしたOne to Oneの個別対応できる仕組みを作れば、もっと大きな効果が出てくるのではないかと思います。

何せこの化粧品業界(いや、その他の業界もそうですが)は、これまで、顧客を知る場がなかなかありませんでした。

そう言うと、「百貨店の店頭でカウセリングした時にヒアリングすればいいじゃん!」という声が聞こえてきそうですが、では、あの百貨店の店頭って、女性が気軽に行ける場所だと思いますでしょうか?

私もこれまでいろいろと調べましたが、多くの女性は、百貨店の店頭に行きづらさを感じているのです。

その理由は簡単です。

売り込まれるからです。

やはり、ビューティーコンサルタントも売上ノルマを求められますから、どうしても“売る”という方向に接客が傾きがちなんですね。

ところが、お客さんとしては、売り込まれることは一番嫌なことですから、買うと決めている時以外には、なかなか店頭には行きづらいわけです。

そうしてお客さんが来なくなれば、企業はお客さんを知る機会がありませんし、店頭に来てもらえても売ることばかりに注力していると、顧客を知るという視点はどこかに行ってしまいます。

そして、もし販売できたとしても、顧客を十分に知ることができずに販売すれば、それが最適な提案とは限らず、結果としてお客さんにとっては不満が残ることにもなりかねませんよね。

このように、本来、ビューティーコンサルタントは、お客さんのことをよ〜く知って、その上でお客さんにキレイに、美しくなってもらうためのアドバイスすることが仕事なのにもかかわらず、評価の方法が売り上げノルマしか無いため、本来やるべきことに注力できないというジレンマがあるわけです。

ところが、こうしたジレンマを店頭で打開した企業が現れました。

それが、あの資生堂なんです。

資生堂では、全ビューティーコンサルタントの売り上げノルマを撤廃して、店頭をお客さんと関係を作り、お客さんを知り、お客さんに学習していただく場にすべく、現在、目下改革中なのです。

ビューティーコンサルタントの評価も、売上ではなく、お客様からの評価で評価されますから、これまでとはお客さんに対峙する姿勢が全く異なりますよね。

そんな流れを店頭のリアルな場で資生堂は体現しているわけですが、このスキンケア大学は、Webサイトを全ての顧客政策の中心にそえて、お客さんと関係を作り、お客さんを知り、お客さんに学習してもらう場にしているわけです。

もっと改善、応用の余地はあるにしても、これは、この手のサイトではお手本と言えるのではないでしょうか。

やはり、このスキンケア大学にしても、資生堂にしても、この化粧品業界はBtoCで、且つ、流行に敏感な女性たちが主ターゲットですから、他業界に先んじて変化のスピードが早い業界と言うことができると思います。

ですから、ある意味、時代の先端を行く顧客たちに、企業側が引っ張られるようにして変化しているとも言えますよね。

今後、企業としては、これまでの「人・モノ・金」の三要素の経営パラダイムから、「人・モノ・金・“顧客”」の経営四要素のパラダイムへと変化していくことが、生き残りの1つの大きな条件になります。

すなわち、企業経営の全ての活動の基点に顧客を置き、顧客と関係を深め、顧客の価値を発見・確認・実現し、顧客と共生・共育・共歓の関係を築いていくことが重要だということですね。

そのための1つの仕組みとして、こうしたスキンケア大学のようなWebサイトの存在というのは、とても大切なものです。

Webサイトも、対面での顧客接点も、DMもメルマガもモノづくりも全て、顧客を基点に発想しなければ、顧客には全く価値の無いものになってしまいます。

現在、多くのメーカーがコモディティ化し、あらゆる業界で価格競争という名の消耗戦を繰り広げていますが、彼らには、経営の基盤に顧客という概念が無いため、メーカー発想でものを作ることしかできませんし、価格を下げることでしか価値を見い出すことができないのです。

今、日本のほとんどの企業はそういう状態です。

そこから早く脱出するためにも、企業はカスタマープリンシプルを持ち、それを実行していくことがとても重要なのです。

そして、その1つの素晴らしい事例が、このスキンケア大学だということです。

今後は、変化が特に早い化粧品業界だけでなく、他の業界にもこうした流れは必ず来ます。

やった企業は勝ちますし、やらない企業は淘汰されます。

こうしたスキンケア大学や資生堂の取り組みを、ぜひ皆さんの企業のこれからを考える参考にしてみてはいかがでしょうか。




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